腸脛靭帯は、ランニングの動作では、足を地面についたときに上半身が傾かないように支える役割をします。
腸脛靭帯は大腿骨の外側を通って、脛骨の外側に繋がっています。
膝を伸ばしている時は腸脛靭帯は大腿骨の外側の出っ張り(外側上顆と言います)の前にあるのですが、膝を曲げてゆくと、おおよそ30度屈曲したところで、外側上顆を乗り越え後方に移動します。このときに腸脛靭帯は大腿骨の外側の出っ張り部分にこすれます。
長距離のランニングでは腸脛靭帯が何度もこすれることによって炎症を引き起こし、膝の外側に痛みが生じます。
はじめのうちはランニング後に痛みを感じ、休むとおさまります。痛みは徐々に大きくなり、休んだだけは治らなくなります。さらに重症化すると、膝関節の曲げ伸ばしが困難となり、膝関節を伸ばしたまま歩行するようになります。
痛みが出る仕組み
ランニングなどで膝の曲げ伸ばしを繰り返す動作によって、骨と周りのスジが擦れあう事によって起こるといわれています。
腸脛靭帯につながっている大腿筋膜張筋や大殿筋の緊張が強くなると、この部分で摩擦が生じやすくなります。
発生の要因はオーバーユースです。過剰なランニング時間と距離、柔軟性不足(ウォームアップ不足)、休養不足、硬い路面や下り坂、硬いシューズ、下肢アライメント(内反膝)など、さまざまな要因が加味されています。
一般的に、筋肉の張りや硬さが原因で、ストレッチやマッサージが有効と言われていますが、
私の考えは、それは二次的なもので、根本的な解決に至らない様な気がしています。
原因を探しだし、根本から解決することが大切と考えています。
腸脛靭帯炎の痛みで来院された方のフォームを観察しました。
A シューズを履かない状態。
B ミズノ・ウェーブライダー
C ホッカ・クリフトン7
D ナイキ・ズームフライ3
素足で走ったとき(1)や、他のシューズで走ったときは膝と膝の間が開いていますが、4のシューズで走ったときだけ膝と膝の間が閉じています。
このように、腸脛靭帯炎の原因は筋肉の硬さだけが原因とは限りません。
腸脛靭帯の痛みを訴えて来院したランナーさんの後ろ姿です。
右と左の膝の形が違いがわかるでしょうか??
痛みを訴える右脚の、太ももの骨と、スネの骨の並びが一直線にありません。関節のアライメントが正常であれば通常、同じ動作を繰り返しても痛みは起きません。骨の並びに異常があれば、骨と腸脛靭帯は擦れあい、痛みが発生します。
多くの患者さんは片足の痛みを訴えて来院します。腸脛靭帯炎の原因は、“使いすぎが原因”とよく言われますが、右脚と左脚と同じ距離を走っているのに、なぜ?片足だけ痛めるのでしょうか?
当院には、遠方他県から多数の方々が訪れます。地元の病院や接骨院で教えてもらったストレッチを毎日やっても治らない、そんな方々が大勢きます。痛みの原因は使いすぎや、ストレッチ不足だけではないのです。原因を決めつけず、一人ひとり違う、その痛みの原因を丁寧に解析することが大切です。
ランナーの体はシューズまで含めて体です。シューズに問題がある場合が少なくありません。
練習に使っていた二足のシューズを履き比べてみました。
どちらも同じ速度です(7km/h)
・Aのシューズを履くと、膝が中にはいりました。
・スネの骨が着く角度がかわりました。
・Aのシューズでは、膝が正面を向いていない為、動きの中に膝を捻じる動きが発生しました。
これらがある場合、スピードを押さえたジョグだけでも膝は破壊され続けます。
ジョグはリハビリではありません。むしろ、ゆるいジョグを長くした方が痛めやすいと言えるでしょう。
スネの骨が立ってる角度の違いが判るでしょうか??(右足)
シューズを交換するだけで、これだけフォームは変化します。
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Aのフォームは、膝が沈んでいるので、腸脛靭帯や、膝の周りの筋肉に負担が多くかかります。
また、足首関節も深く曲がっていますので、アキレス腱炎や、シンスプリント、足腱膜炎になりやすいと言えるでしょう。Aのシューズは膝が沈み込むぶん、余計な筋力を使うので、体力は消耗しやすく、
タイムは出しにくいシューズと言えるでしょう。