車や自転車を使う競技なら、日頃からマシンのメンテナンスは欠かさないでしょうし、マシンについて学んで来ているはずです。それだけ大切だと認識していると思います。
ですが、自分の身体を使うランニングの場合、自分の身体がどうなっているのか、どうやってメンテナンスしたら良いのかを分かっている方は非常に少ないです。
今回は、専門の治療を受ける前に自分でメンテナンスすることで改善できるということを分かってもらうために、治療をせずに本人に治してもらいました。
ランニング時の右股関節と右膝の痛み
30代 男性
会社員
フルマラソン初挑戦のため、毎日走り込む日々。
元々サッカーをやっており、当時から右股関節につまり感がありましたが、ランニングには支障がないので放置。
ところが、一度20kmのランニングを行なってから、右股関節と右膝に痛みが出てしまい、それ以降休んでも走ると痛みが出てしまうと言う状態が続いていました。
「このままでは、フルマラソン完走なんて出来ない」
と言う悩みで来院されました。
身体と動きの検査をしてみます
車の整備をするときは、まず車体が曲がっていないか、そして走っている時に安定しているかどうかを見ていきます。
身体も同じです。
特にランニングでは左右対称性と、動的安定性が大切になって来ます。
まずは姿勢から。

側面から。

次に片足立ち、スクワットを見ていきます。


右足の方が斜めに傾いてしまいます。
次にスクワット。


こちらも右のほうが傾きが強く、グラグラしてしまいます。

特に右のスクワットは、ニーイントゥアウトと言われる不良なアライメント(配列)になっています。
片足立ち、片足スクワットが真っ直ぐ安定せずに7秒キープ出来ないようだと、故障のサインです。
足裏のピドスコープ検査はこんな感じでした。

続いてランニング検査を行います。
トレッドミルで時速6キロメートルで走ってもらいます。
軽快に走れているようですが、気になる所が2つ見えて来ました。
蹴り出しを見てみます。
まずは左の蹴り出し。
次に右の蹴り出し。
左足は真っ直ぐ蹴って、真っ直ぐ戻っていきます。
ですが、右足は蹴った後に外側を大きく回って帰って来てしまいます。
通常のランニング動作ではこの外に回る動きが出ることはありません。
蹴り出しが真っ直ぐに出来ない原因が右足にありそうです。
続いて上半身の、腕の振りに着目してみましょう。
右肘は真っ直ぐに引いてこれますが、左肘は開いた状態になってしまいます。
この動きは同じようになんども繰り返されています。
右足がねじれて、左足が開いていると言うことは、身体の中がねじれていると言うことです。
筋肉や関節に無理な負担がかかるばかりか、体力の消耗も激しくタイムが落ちてしまいます。
続いて横からみたランニングがこちら。
骨盤が前に傾かず、真っ直ぐ立っている状態です。
この状態では、前に進む力が弱くなり、顎も上がってしまいます。
この姿勢から顎だけ戻すと、喉元が締め付けられて呼吸かしにくくなってしまいます。
姿勢と動きだけでも、身体の中でスムーズに連動が出来ていないことがわかりました。
今回、治療ではなく本人にセルフケアを覚えてもらい、自分で治してもらうことにしました。
セルフエクササイズ指導
動きの問題点を改善するために、セルフエクササイズを指導しました。
今回は2つだけ。
さて、治療をせずに2種類のエクササイズを行い、体はどう変化したでしょうか?
まずは片足スクワットから。
続いてランニング動作を確認します。
右足の外ぶりの動き、肘の振りが改善されています。
横から見ます。
骨盤が前に倒れることで、姿勢も前傾になり前に進みやすい状態になりました。
そのおかげで、顎の位置も良いところに収まっています。
動きが変わった段階で、股関節の痛みが無くなっていることを確認。
まずは1週間、こちらのセルフエクササイズを自分で頑張ってもらい、1週間後に来てもらうことになりました。
ランニングの痛みは、必ずと言って良いほど動きに表れています。
逆に、スムーズな動きを取り戻すことができれば、痛みなくランニングすることが可能になります。
身体のお手入れ、大切ですよ。
長くなったので、こちらの患者さんの経過とエクササイズについてはまた次回ご紹介させていただきます。